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一人で暮らす事は少し不安だったが、海外に行くよりはマシだと思ってその条件を飲んだ。 高校も転校する事になって、手続きは早々に母親がやってしまった。どうやら母親は海外行きを楽しみにしているみたいだ。 無事、両親を見送った後、暫くぶりに来たこの土地でいきなりあの蛇に襲われたのが先刻の出来事。 そして成り行きで狐を連れて帰る事になった。 新しい生活の一日目にしては先行きが不安になる事ばかりだ。それでも父親の海外勤務が終わるまではこの家で暮らして行かなければならない。 弱気になれば付け入る隙を与えてしまう。グッと強気でいなければ。 幸いこの狐が居れば今日みたいな事は何とかなりそうだ。 「さて、まずは掃除だな」 ずっと使っていなかった部屋を綺麗に掃除して生活出来る状態にしなければ。前もって母親が必要な荷物を引越し業者に頼んで運んで貰ってあるから、それも片付けなければ。 やる事は沢山ある。この土日が終われば新しい学校にも初登校しなければいけない。 狐に構っている暇なんてないんだ。 家中の窓を全開にして、空気を入れ替える。風通しのいい造りのこの家は、歩けば軋む音がするけれどまだまだ取り壊すには惜しい。
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