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「にーな?」 狐が顔を覗き込んでくる。近くで見れば見るほど人間離れした容姿に頭がボーッとなってくる。 見とれているとペロリと鼻の頭を舐められ、驚いて身体を後退させたが背中に賽銭箱が当たるだけで意味はなかった。 「いきなり何をっ……」 文句を言おうと口を開くと今度は唇を舐められた。まるで犬や猫が飼い主にじゃれるようにペロペロと遠慮なく。 「にーな、にーな。オレのにーな」 抵抗しようと狐の身体を離そうと腕を突っ張るが、口内に入ってきた狐の舌の滑らかさに力が抜けてしまった。 口の中を散々舌で舐められている間も、催眠術にかかったかのようだった。自分の意思も身体も自由が利かずにされるがままなっていた。 さっきの蛇よりもタチが悪いとにいなは思った。こんなされるがままなんて有り得ないと。 何とか身体に力を入れて腕を伸ばし、狐の顔を両手で挟んだ。その行動に狐が一瞬、怯む。 口唇を離して狐を見ると、トロンとした表情でにいなを見つめていた。その顔を可愛いと思ってしまった。
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