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こんなの反則だ。
これは人間じゃなくて狐の化けた姿なのに、こんなに可愛く見えるだなんて。
もしかしたらこれが狐に憑かれるというやつなのかもしれない。
今までこんなにハッキリした姿の化け物を見た事はない。いつもだいたい、モヤだったりよく分からない形だったりで奇妙なのに、この狐は人型どころか言葉まで話す。
「にーな?どうした?」
再び舐めようとする狐の口を手で抑えて、にいなは動揺を落ち着かせる為に深呼吸をした。
「嫁とか……俺、男だから」
「男……?」
「そう、男。しかも人間。狐じゃないから嫁にはなれない」
問題はそこじゃない気もするが、とにかく頭を整理したかった。
しかし狐はキョトンとした顔で首を傾げた。
「おかしな事を言う。にーなが人の子なのは知っているぞ?それに男でも何ら問題はない」
「そ、うなんだ……?」
問題しかない筈なのに、この狐に見つめられると自分がおかしな事を言っている気がしてくる。
「いや、でも、嫁になるつもりはない!」
そこら辺にいる人間より遥かに見目麗しいのは確かだけれど、狐の嫁なんて以ての外だ。
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