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俺の姉貴である美玲から「私、結婚するの」と突然告げられた。
「そうか…おめでとう」
『おめでとう』か。美玲が結婚すると聞いて祝福の言葉が俺の口から出てくるとはな。実姉である美玲への執着を絶ちきることが出来たのはアイツのおかげ。俺に『永遠に離れない』と愛を誓ってくれた恋人、健一がそばにいてくれるからだ。
実は俺は昔から女に異常なほどに嫌悪感を抱いている。そんな俺が唯一信頼できる女が姉の美玲だ。
世間一般的な認識で言うと"シスコン"ってことになるんだろう。本当は"シスコン"なんて生易しいもんじゃないが、そう思わせといた方が楽だから否定してはいない。美玲に言い寄ってくる男たちは俺が全て排除してきた。どんな手を使ってでも……。
健一と愛し合うようになってからは、その役目を果たさなくなってたんだな俺は。
「で、相手はどこのどいつだ?」
執着から解放されたとはいえ、姉弟には変わりない。義理の兄になる男をしっかりと見極める必要がある。
「実は純も知ってる人なの。でもね、今はまだ内緒!」
美玲はギリギリまで相手の男について言わないらしい。結婚式で初対面ってか?冗談じゃねえ。美玲が言わないつもりなら親にでも聞くしかない。
「なあ親父。姉貴と結婚する男って誰なんだ?」
口止めされてる親父を説得するのには骨を折ったが、サプライズで祝う計画のためにどうしても知る必要があると半ば強制的に口を割らせた。
「お前の友達の、健一くんだよ」
…………なんだと!?
健一って、あの健一?なんでだ?
健一は俺の友達なんかじゃない。
俺の、恋人だ。
家族には俺と健一が恋人同士であることは秘密だから"友達"と認識されているらしいが……違う。
俺は動揺をひた隠しにして、親父に怪しまれないように然り気無い会話を交わした後、その場を去った。
美玲と健一が、結婚だと!?
美玲は親父と同様に俺と健一が友達だと思っているんだろう。
しかし健一の奴。美玲が俺の姉貴だと知ってて一体なんで結婚なんか……。
俺は美玲が実の姉であるにも関わらず、姉としてではなく一人の女として愛していた。その想いを本人に告げることが出来ずずっと闇をさまよい続けながら生きてきた。そんな俺を救ってくれたのが健一だ。健一から惜しみ無く与えられる愛だけが、俺の生きる支えとなっていた。
それなのに……裏切られたんだ。
俺は健一と美玲を許せない。
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