9人が本棚に入れています
本棚に追加
ママは一瞬、老紳士の方をチラリと見たような気がした。老紳士は温かい笑みを浮かべていた。
「よろしくおねがいしまふ」
差し出されたママの手に、時野はそっと腕時計を託した。
大切な時計を捨てずに引き取ってもらえることになって、安心したのだろうか。時野はそのままカウンターに突っ伏してスヤスヤと眠ってしまった。
「あらあら。泣き疲れたのね」
たぶん、フラれてからの一週間が応えただろう。毎日そのことばかりが頭に浮かんで辛かったはずだ。これでようやく、気持ちに整理が付けられることだろう。
「いやぁうるさかったですよね。すみません。それにしても、付喪神ですか。なかなか素敵なお話が聞けた」
「人間と同じで、物だって愛情を注げば応えてくれるわ。ねぇ、梅島さんて、物をとっても大事になさるタイプでしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!