スナック つくも神

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ママは一瞬、老紳士の方をチラリと見たような気がした。老紳士は温かい笑みを浮かべていた。 「よろしくおねがいしまふ」 差し出されたママの手に、時野はそっと腕時計を託した。 大切な時計を捨てずに引き取ってもらえることになって、安心したのだろうか。時野はそのままカウンターに突っ伏してスヤスヤと眠ってしまった。 「あらあら。泣き疲れたのね」 たぶん、フラれてからの一週間が応えただろう。毎日そのことばかりが頭に浮かんで辛かったはずだ。これでようやく、気持ちに整理が付けられることだろう。 「いやぁうるさかったですよね。すみません。それにしても、付喪神ですか。なかなか素敵なお話が聞けた」 「人間と同じで、物だって愛情を注げば応えてくれるわ。ねぇ、梅島さんて、物をとっても大事になさるタイプでしょ?」
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