スナック つくも神

「探すも何も、酒は冷蔵庫か戸棚にしか入れん。そこにな無けりゃあ無い」

うちはそれほど物が無い。沢山買い込めば、それだけ沢山捨てることになる。そういうのは嫌いだ。俺は物にだって愛情を持って接するべきだと思っている。だから、俺は一度買った物は大切に使うし、不必要な買い物はそもそもしない。

「よくこんな物が無くて生活できますね」

酒が無いことを責めてるのか、厭味ったらしい口調で時野が毒づく。

「俺は大事な物しか買わないの。俺はお前みたいに消費社会に流されたりしない」

「ただの貧乏性じゃないっすか」

「違う。信念の問題だ」

しかし、まぁ酒が無いのは事実だ。一応フラれて随分落ち込んでいるようだし、ここは時野の主張を聞いてやるか。

「よし、とりあえず泣き止んだみたいだし、呑みにいくぞ」