スナック つくも神

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こうして俺達は二人で部屋を出て、適当に呑めそうなところを探すことになった。 まだ少し時間が早いとあって、開いている居酒屋はなかなか見つからない。 二人で、近所をブラブラ歩くうちに営業中のスナックを見つけた。 こんなところにスナックなんてあったかな。初めて見た気がする。 店の前には<スナック つくも神>という看板が出ている。変わった名前だが、まぁ酒が呑めればそれでいい。 ドアを開けて暗い店内を見渡す。店内はカウンターのみのこじんまりとしたものだった。7席ある。一番奥にお客が一人。白髪の老紳士が席に座っている。 この老紳士もなんだか不思議な格好をしていた。上着にローマ数字の模様が入っており、ネクタイはまるで振り子のような形をしている。椅子の隣に立てかけられた杖は時計の長針みたいだ。 「いらっしゃい」 思わず老人に目が言ってしまったが、女性の声で我に返った。声の方を向いた俺は一瞬息を飲む。
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