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そうよ、私が死ぬ事ないじゃない。
何故アイツのせいで私が死ななきゃなんないのよ。
「ふっ……ふふ……ふふふ……」
そう考え始めると笑いが込み上げてきた。
何故思いつかなかったのだろう。
私が貯金を失い、陰で嗤われ、セクハラ三昧の目に遇わされるのは全部あの男のせいじゃない。
私が死ぬ事ない。
アイツを殺せばいい。
そして奪われたお金を取り戻せばいい。
でも待って、アイツは今何処にいるのかしら?
捜しだして、どうやって殺す?
刃物? 毒? どこからか突き落とす?
首を絞めてやろうか……腕力がいる……ダンベルでも買おうかしら?
銃殺なんてのもいい。
でも手に入るかしら?
「ふふ……嫌だ、楽しい」
私は男の死に顔を浮かべて、久々に笑い声を漏らした。
「ああ、そうだ。アイツだけじゃなくて他にバカにしてきた奴らも殺してしまおう」
私はウェディングドレスを眺めながらセクハラオヤジ達の哀れな最期を思い浮かべる。
あはっ……あははははっ!
外に聞こえるくらい大きな声で腹を抱えて笑う。
楽しい!
自殺が巧くいかないんじゃない。
私は『こっち側』の人間なんだ!
台所から包丁を持ち出し、ドレスを切り刻んでやる。
笑いながら、アイツらの怯えた顔を浮かべ、飛び散る血飛沫を想像して刃を振り回す。
精神崩壊?
違うわ……ギリギリ正常よ。
明日からも私は平静を装って生きていく。
そうね、まずは親にお金と食料を貰いに行こうかしら……何もないのだもの、次の給料までの生活費を用意しなきゃ。
そして頭の中で殺人を犯しながら、笑って生きてやる。
目の前にアイツが現れるまでに計画を練り上げてやるのよ。
ふふ……ふふふ……なんて楽しいのかしら。
私は自殺なんて考えなくなっていた。
だって、それよりもヤりたい事が見付かったのだもの……ふふふ……。
~fin~
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