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AM3:00
私、塚佐万里(つかさ ばんり)は遺書を書いた。
未だ寒さが残るこの時季に、暖房もつけていない独り暮らしのワンルームの部屋で、明日……いえ、今日が誕生日だから、30歳になったこの日に、私は死ぬと決めた。
「……ありきたりな言葉ね」
自分で書いておきながら、白い簡素な便箋を眺めてその中の文面に溜め息を吐く。
「仕方無い……こんなもんよ」
他に書きたい事もないし、書き始めると愚痴ばかりになって、みっともない。
最期を迎えるというのにたらたらと長ったらしく心情を綴るのも馬鹿らしい。
そんなもの、読む方だって呆れるだろう。
私は立ち上がり、前もって入念に洗い浄めてある体にお気に入りの服を身に付け、丹念に化粧を施した姿を壁に立て掛けた姿見に写した。
少し窶れたようにも見える老け始めた自身に悲哀の念が込み上がる。
「うん……よし、行くか!」
軽く気合いを入れて、書いたばかりの便箋を折り畳んで真っ白な封筒に入れ、車の鍵と財布や免許証を入れただけのバックを手に部屋を出た───
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