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最後となる賃貸アパートの扉を閉める。
愛用の軽自動車に乗り込みエンジンを回した。
夜空を見上げ、澄み渡った星空を見るなどという感傷に浸るのは飽きた。
何故死を選んだのか?
そんな事、何処にでもある理由よ。
聞けば『馬鹿馬鹿しい』『くだらない』と一蹴される。
だけど、私は疲れたの……教養のない頭で考えるのも、自分を偽って笑うのも、泣き喚いて自分を慰めるのも……。
誰かに縋りたくても誰もいないし、誰かに話しても理解どころか、嘲笑われて終わる。
私はバカだもの。
頼れる人なんて、信じられる人なんて、見当たらない……いないのよ。
半年前までは幸せの絶頂だった。
結婚一歩手前で、浮かれてた。
その婚約者が結婚資金を手にしてとんずらこいた。
高卒で、実家を出て小さな会社を転々としながら貯めた500万。
他にも車代だ、旅行代だと金を無心されたけど、2人の未来の為だと貯金を崩し続けてた。
そいつは私の他にも2人の女を囲ってたと、貯金残高に震えながら耳にした。
何度も凝視した手元の数字3桁が私に報せる……『現実だ』、と。
部屋には着る予定だったウェディングドレスが飾ってある。
片付ける場所がないのだもの、毎日純白のドレスとご対面する。
買ったのは自分でしょ?
着るはずもないのに……100万もした。
安い? 高い?
どーでもいいわ。
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