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「さてと、馨ちゃん」
にんまりとした笑みを浮かべて、逃がさないぞとばかりに迫るのは湯村楓。
「なんだよ……」
不機嫌な声で唸る馨は苦々しい表情を浮かべている。
「お前がここまで悩んじゃう恋の相手は誰かな?」
楓はニヤニヤが収まらない。
「そんなんじゃ…」
「あるだろ」
ない。と続けるはずの言葉は楓に横どられた。
いつもなら上手く逃げ遂せたはずなのに、今日という日に限って自棄酒を煽った自分が憎い。
いや、今日という日だからこそ、酒に逃げ道を作った。
あの時湧き上がった感情にどうすることも出来ず、千草にひどい言葉を投げつけた。
あの瞬間の自分の顔はきっとさぞ醜かったことだろう。
親しげに交わされるその柔らかい視線。
そんなもの向けられたことがない。
あの優しい目を向けられないことに何故ここまで苛立つのか。
あいつは彼氏だから当たり前だ。
そして俺はただの上司。
それだけの関係
なのに、何が…
何がこんなに苛立たせる!?
一体なんなんだ!
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