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黙り込んでしまった馨を横目に楓はハイボールを煽る。
おいおい、マジかよ。
楓は内心動揺していた。
これほどまでに苛立ち、感情を露わにする馨を見るのは、もしかしたら初めてのことかもしれない。
高校からの付き合いがある馨と楓。
なんに関しても熱くなることが無かった男。
仕事に関してだけ面白みを見出したとニヒルに笑っていた男。
恋愛に関してそれを恋愛といっていいのか疑問になるほど、女たちが哀れで冷めきっていた男。
その男がどういうわけか、女に此処まで乱されている。
そんな馨に対して、一瞬の動揺がすぎれば、若干のざまみろという気持ちと、相手の女に対しての興味が沸いてくる。
「精々苦しめよ」
楓は喉の奥で笑いながらグラスを空にした。
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