既視感

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「そろそろかな。うん?はは、わかってるよ。お前とは違って俺は優しいからね。…ああ、来たみたいだ。じゃ、また」   馨が自社ビルの前で車を降りれば、約束していた人間が少し離れたところで電話をしていた。   こちらに気付くとさっさと電話を切り、にこやかに手を振りながら近づいてくる。   その爽やかさに思わず馨は笑ってしまった。   「待たせましたか?」    「ああ、丁度電話もかかってきたから、暇してなかったよ」   待たせたかという問いに対して待ってないよという常套句を返してこない、そんな彼が以前と変わらず馨に好感を与える。   「さて、まだ早いけど腹ごしらえにでも行きましょうか?腹が減ってはなんとやらってね」   おなかを擦りながらウインクを浮かべる峰倉に、相変わらず外見と中身が伴わない人だな、なんてことを思いながら馨は同意する。   「それより、戦ってどういう意味ですか」   わざと責めるような口で峰倉が濁したことわざの後を引き継げば、峰倉は俺にとってはほんとに戦かな?と馨にとってよくわからない言葉で返してきた。   彼の不思議な言動はいつものことなので首を傾げつつも、先を歩く彼の後を追う。   「和食にしよう」   横に追いつくや否や、そう提案してきた彼に、こっちに帰ってきてしばらく経っているとはいえ、やはり日本食を求めてしまうのだろう。と納得した。   「じゃあ、美味しいとこ知ってるんでそこに」   今日は愚痴に近い相談ごとを聞いてもらうこともあり、峰倉には美味しいものを食べてもらおうと、若干の邪な思考に馨自身、現金な奴だなと思ってしまった。
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