既視感

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    猛は自室でパソコンに向かいながら、新しいタバコを手に取った。   最後の一本はさっき吸ってしまったばかりで、それが入っていた空箱はゴミ箱の横にこてんと落ちていた。   ゴミ箱シュートを外して、ごみ屋敷になりそうな気配にも気にせずに放置したままなのは、この部屋に来訪する人間がいないからだ。   いや、いなくなってしまった、だ。   タバコの包装用フィルムを手馴れた手つきで剥がし、中の銀紙を引き抜いたところで、ふとパソコンの横に置いたタバコの吸殻の山に埋もれた灰皿に目を向けた。   今にも雪崩が起きそうなそれに、猛はひとつ息を吐き出すと、重い腰を上げて灰皿を片付けだす。   ごみは放置していても、いくらなんでも灰皿は片付けないといけないことは理解しているようだ。 くわえタバコをしたまま部屋を見渡す猛は、やはり良一郎と血を分けた兄弟。 様になっている   わずかについた寝癖を気にすることもなくくしゃりとさらにかき乱す。   あれから随分長い期間、雫とは会うどころか、連絡すら取っていない。   もともと猛から連絡や会う段取りを取らなくても雫のほうからやってきていたのだ。   だから雫からの連絡が途絶えれば、必然的に二人は会うことも、話すことさえもなくなってしまう。
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