47人が本棚に入れています
本棚に追加
遠くで微かに音が聞こえた。
急激に浮上してくる意識に僅かにキモチ悪さを覚える。
目を開けても頭は未だに完全に覚醒していない。
ぐわんと回る世界に眉がよってしまう。
気だるい身体を無理やり起こして周りを見れば、一瞬、時間の感覚がなくなったかのように頭が混乱した。
次の瞬間には、自分が眠ってしまったのだと合点がついた。
薄暗くなった部屋、空気もすっかり冷たくなっていて、吐く息が白くないのが不思議なほどの寒さだった。
秋口といっても日が落ちてしまえば気温がぐっと下がる。
そんな季節になったのだ。
寝起きで、体温の下がった身体にそれは尚のこと寒く感じられた。
未だぼんやりと、ベットの上で座り込んだままの猛の耳に、覚醒の原因となった音が響いた。
決して小さくない音で来訪者の存在を告げる。
最初のチャイムからだんだんと早くなる、チャイムが鳴らされる間隔。
猛はいつかの日に同じようなことがあったなと、どこか人事のように考える。
最初のコメントを投稿しよう!