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そして
がんがんとドアが蹴破られるかと思うほどの音。
猛は情けないことにその音に、びくりと肩が跳ね上がってしまった。
誰にも見られなかったことをほっと思いながら、慌てて玄関へ向かう。
しかし、ある思考にぴたりと動きを止めてしまった。
まさかと思った。
ドアを蹴るような音が響き渡る中、鍵に手をかけたまま固まった猛。
まさか
ドアスコープから確認する勇気がない。
猛の中で起きたデジャヴ。
それが正しければこのドアの向こうにいるのは
一気に早まった心音に息が詰まる。
鍵に伸びていた指が震える。
寒さじゃない。
長い時間会わなかったことが猛を気弱にさせてしまっていた。
顔を合わせて何を言えばいい？
考える時間はたくさんあったのに、何も考えることができなかった。
思い出に浸り、達成感と後悔に飲み込まれていたから。
ぐるぐるまわる思考に、はっと気付いたときにはドアを叩く音はすっかり止んでしまっていた。
それどころかドアの向こうに人の気配すらなくなってしまっていた。
それに気付いた猛はさっと顔色を変えて焦った。
「っ待った！！」
叫び、慌てて鍵を外しドアを勢いよく開けた。
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