既視感

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勢いよく開けたドアは、しなる様にグワングワンと音を立てた。   拓けた視界の先に仁王立ちで、むっとした表情の彼女がいた。   「遅い!!」  ああ、やはり夢の続きだろうか。   だらしないスエットに裸足で玄関先まで出てしまったことなんて、まったく気にならなかった。   髪もボサボサで、体はヤニ臭いことこの上ないだろう。   後ろでドアが閉まった音がした。   腕に閉じ込めた温もりを心から感じて、ようやく呼吸ができた。   あと少し、遅ければ俺は窒息死していた。   猛は真剣にそう思った。   彼女のそばでしか呼吸ができない。   耳元で聞こえるはっとしたように騒ぎ出す彼女の声。   暴れだした身体を逃がさないと言うようにさらにきつく抱きしめた。   「雫……っ」   すがるような声   聞いているほうが胸が苦しくなるような声。   そんな猛に、腕の中に閉じ込められたままの雫は、震えるようにため息を吐いた。   「馬鹿猛、さむいっつの」   雫の赤くなった耳は寒さのせいだけじゃなかったと思う。   猛は喉で笑いをこらえて腕に籠める力を緩めた。 離れていく体に寂しさを感じたのは、温もりを求めていたからだと、自分に言い聞かせ、雫は我が物顔で猛の部屋へと入っていった。   その後姿に、猛はどうしても緩む顔が抑えられない。   以前と変わらない雫の姿がそこにあったから。   弾む気持ちで、雫に続いて部屋に入ろうとドアに腕を伸ばせば、部屋の中から絶叫するような雫の声が聞こえた。 何事かと思ったが、今の部屋の現状を思い出し猛はさっと顔色を青くした。
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