既視感

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「っぶ!!」 笑った猛の顔にクッションがぶつかる。   投げつけたのは言わずもがな、雫。   「おっそいんだよ!だいたい順番が違うだろ!馬鹿」   クッションが視界から消え、見えたのは真っ赤になって涙目で叫ぶ雫の顔。   「は、はい」   胡坐をかいて座っていた足をすばやく正座に変え座りなおす。   「いきなりキスしてくるし、訳わかんないし、怖かったんだから!」   二つ目のクッションが飛んでくる。   「うん」   それを猛は軽々受けとめて膝の上に抱える。 「ず、ずっと一人で考えて、でもわかんなくて、あんたのことばっか考え、て」   浮かんでいた涙はすでに目からあふれ出し、とめどなく流れている。   「ん」   そんな雫を見つめながら猛は、不謹慎ながらもにやける頬を引き締めることに必死だ。 「な、に、笑ってん、のよ!」 会えなかったこの長い期間、彼女も同じように自分のことを考えてくれていたのだと思うと、嬉しさを隠せない。   「ごめん」   涙目で睨んでくる雫に、やはりどうしても笑みが浮かんでしまう。
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