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「ちぃ大丈夫か?」
覗き込むように顔を出せば、ちょうど千草もこちらへ出てくるところだったのか、ぶつかりそうになった。
「わっ…あ、私は大丈夫カップ落としちゃっただけだから」
振り返りみる千草の目線をたどれば、キッチンマットの上でコーヒーを撒き散らしたまま、カップが転がっていた。
「火傷しなかったか?」
「うん」
手をひらひらと振って無事をアピールする千草に、良一郎はほっとしたように笑い頭をなでる。
「それよりしーちゃんは?」
そして続いた妹を気にかける言葉に「あいつはほっとけ」と、若干すねたように言うのはやはり先ほどのことが尾を引いているのか。
「んなことより、ここ片付けるぞ」
腰を折りカップを拾い上げる良一郎に千草はあわてる。
「いいよ、良ちゃん。私やるから…それよりこれ」
ワークトップの上に、コーヒーの入った二つのカップと一緒に、用意していた即席の氷のう。
それをタオルで包んで良一郎に渡す。
「冷やしたほうがいいよ」
ここ
良一郎の頬を痛そうに見ながら自分のそこをさする千草。
「ああ、さんきゅ」
言われて思い出したように氷のうを頬に当てた。
タオル越しの鈍い冷たさが、熱を持ったそこを冷やしていく。
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