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『…女がらみ』
部屋に入る前に聞いた、良一郎のその言葉に動揺した。
まさかと思った。
そう思う反面、ああ、やはりと納得してしまう自分もいた。
彼があんなに心を乱すことなんて見た事がなかった。
ましてや、女性に関してなんて。
良一郎との関係はわからないが、その女性を彼らがめぐって争っていたのなら、先ほどのことはすんなり納得できる。
あれほど女性関係に無頓着だった彼が、あんなに激情するなんて。
その女性のことを彼は本気で…
そこまで考えて…やめた。
ちりりと焦げ付くような痛みに笑いが零れてしまう。
何を勝手に邪推しているのか。
関係ないくせに
その上、見たこともないその女性に嫉妬してるの?
そんな資格なくせに
傷ついてるだなんて
「馬鹿だな…ホント馬鹿」
シミを叩く手の甲に落ちた滴。
「…っふ…ぅ」
千草の心にかかる鍵
かちゃん
その音はとても、とても小さくて、誰にも気付かれることはなかった。
長い夜
叶うことのない恋心に気付いた
でも手放すことの出来ないそれ
心の奥底に沈めるから
きっと隠してみせるから
だから
想いを捨てさせないで
お願い
そばに
ただ
そばにいることを
許して
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