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振り返ることなく、後ろ手で閉めた扉に寄りかかり、重い溜め息を吐いた。
「ホントに皮肉だな」
呟きとともに、先ほどから振動し続けていた携帯を内ポケットから取り出した。
表示されている名前に、目を細め、無感情なまま通話ボタンを押した。
「終わった。ああ、今からそっちに行く。…まったく酷なことさせるね……良一郎は」
通話口の向こうで低い笑い声が漏れた。
「ちょっ!馨さん!さっきの人…!」
ぼんやりとグラスの中身を眺めていれば、瀬尾が慌てたように近づいてきた。
「なんだ?」
「何であの人と一緒だったんですか?!」
必死に縋り付くような瀬尾に思わず身体が仰け反った。
「あの人って…ああ、瀬尾も知り合いだったのか」
「知り合いって言うか、俺の先輩です!木崎真!こないだ馨さんが殴った人の親友で……ちー姫の元彼です!!」
底の重いロックグラスを手から滑らせてしまった。
「……は?」
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