咲き誇る花、その彩りは美しく  華やかに変わりゆく

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「しばらくしてから、良一郎には連絡は入れていたんだ」 「…じゃあ良ちゃんは知ってたの…?」 真くんの居場所を… さえぎるものが無くなり、露わになった千草の瞳が大きく見開かれる。 「ああ、でもそのことは責めないで。俺が口止めしておいたんだ」 「どうして…」 「そのほうが、いいと思った。忘れることができると思ったんだ。千草も、そしておれ自身も」 ごめん、これも自分のための卑怯な行いだったよね。 呟いて俯く真に、千草は何もいえなくなった。 「…心配した…真君あんなのだめだよ。忘れるなんて無理だし、出来ない…でしょ?」 くすりと笑って肩に置かれた真の手に自分の手を重ねた。 なだめるように。 「…あの時のこと最近になって良と話したんだってね」 真はゆっくりと肩から手を下ろし、添えられていた千草の手を握りなおす。 「苦しめてごめん。悩ませてごめん」 「真君…」 「でも、ちょっと嬉しくなった。それもごめん」 困ったように笑う真に千草も同じ表情を浮かべた。 「…でも千草の俺への気持ち、あれはやっぱり勘違いだよ」 言われてすぐに思い当たる。 『家族や兄弟に対する感情なんて真に感じていたのは始めだけ。 本当に愛してた、利用したという事実と後ろめたさに捕われすぎていたから、気づけなった』 「……、」 「今ならちゃんとわかるよね?」 握られた手に力が篭められた。 「千草は見つけたはずだから」 ああ、この人は この人は知ってるんだ 正面から向けられる懐かしく優しい瞳。 何の根拠も無いけれど、感じた。 この人は、私の悩みも、不安も見透かしてるんだ。 千草の心に突き刺さっていた、小さな壊れたモノの破片が、ゆっくり融け消えていくのを感じた。
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