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「いあっ!」
ラジオブースの椅子に腰掛けた瞬間、自由はおかしな奇声を発した。要が驚いて怪訝な顔で自由を見た。
「どした? 静電気か?」
「いや……筋肉痛……かな……、はは」
要の何かを察した冷ややかな視線を自由は咳払いして躱し、ヘッドフォンを掴んだ。
「運動も程々にな、お前はうちの大事なボーカル様なんだ。その少し掠れた声を聞いたファンが、お前は体調不良なんじゃないかと胸を痛めるような勘違いをさせる真似だけはやめてくれよ」
「はい、肝に命じます。あとアイツのナニにも──」
自由はギリギリと奥歯を噛みながら、気分爽快で送迎してくれた男の笑顔を思い出して苛立った。
調整室から時間を知らせるスタッフの声にメンバーは仕事モードに表情をシフトした。自由の頭からは、しばらくの間エロジジィも姿を消すだろう。
デジタル時計が訪れる時間を知らせる。自由はキューの合図で息を吸い、明るく突き抜けた声で挨拶した。
「こんばんわー!! widersprechen、ボーカルの自由です!!」
♪Fin♪
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