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自由は気持ち良さげな猫のように、葉山の胸に頬を押し付けている。
「落ちてたから……拾った」
「へっ?」
「公園の隅っこで……歌ってる路上ミュージシャン見ながら一人酒で号泣してた」
「ウソッ、覚えてないっ」
自由は一気に耳朶まで真っ赤に茹で上がる。
「一緒に呑むかって聞いたら──うん、って……ぐしゃぐしゃの顔で迷子のチビみたいに頷いて……」
葉山はその時のことを思い出しているのか懐かしげに笑う。
「……ほっといたら……死んじゃうって……思った──?」
「思ったよ……。けど、愚痴り出したから大丈夫だなって途中から思った」
自由は葉山を下から覗くように見上げていた顔を恥ずかしそうにまた伏せた。
「──でも、もう少し見ていたいって思ったんだ……」
そう溜め息混じりに告げる葉山に自由はさらに強く抱きしめられる。
「ア、アンタさ──あんな真似して俺にもう恋人いたらどうするつもりだったの?」
「いや、いないのはわかってた」
「ハァ?!」
決して間違ってはいないのに、なぜかはっきり言われると腹が立つ。
「酔ってる間全くそのテの話が出なかったから。それに──いても、別にいいよ。アレは俺の自己満足だったし……」
葉山の優しい瞳が真下にいる自由を覗く。
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