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「クソッ! あいつらなんもわかってねーよ!」
半個室の居酒屋で自由は声を荒げ、飲み干して空にしたグラスを乱暴に置いた。
着ている安めのボーダーシャツは何箇所かさっき食べた焼き鳥のタレがシミを作り、ボサボサに伸びた髪の毛は2ヶ月切るのを我慢していて、すっかり根元はプリン状態だ。
大した度数のアルコールでもないのに、四杯を越したところで自由のそれは泥酔に近かった。熱い風呂にでも浸かったかのように赤く染まった顔をテーブルに突っ伏し、口にした言葉はどことなく呂律も回っていない。
「もっと一般受けする歌にできないかぁ~って、それじゃオリジナリティが無くなるってんだよぉ~」
「──オリジナル、ねぇ……」
そう静かに答えた向かい合って座る男は、サラリーマンにしては耳に掛かる髪が長めで、少し光沢のあるチャコールグレーの長袖シャツを軽く腕まくりしており、すっと通った鼻梁には黒縁の眼鏡。今年成人式に出席したばかりの自由よりもずっと年上な雰囲気だ。
適当な相槌を何度か打ちながら咥えたタバコに火をつけ、自由に当たらぬよう横を向いて燻らせた。
「おーい! きーてんのかよお~!」
「聞いてる、聞いてる。うんうん、酷いよねぇ──」
「だろぉ~~?!」
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