track.4

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track.4

 疲れ果てた自由は猫のように身体を丸め、枕に顔をうずめてぐっすりと眠っていた。  泣き過ぎたのか目尻が赤く腫れている。  男は一人書斎に篭り、濃いめのブラックコーヒーを片手に製図用の細いシャープペンを何度か設計用紙に走らせては時折額に当て、思いついたようにまたペンを走らせ、それを何度か繰り返す。  数時間か経過し、キリがいいところで手を止め、ペンを無造作に机に転がすと空のマグカップと一緒に自由の眠る寝室に向かった。  眼鏡を外し、咥えタバコでベッドを覗くとちょうど自由が寝返りを打ってこちらを向いた。 「ん……」と声にならない寝言がして、じっと眺めていると口が咀嚼するように動きはじめた。 「まだ食ってんのか」と男は呆れ半分微笑み、悠々と幸せそうに眠っている自由をしばらく眺めた。     
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