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葉山はトーストにスクランブルエッグにベーコン、サラダにコーヒーと、極々一般的な朝ご飯を作って自由に出した。
朝からステーキでもなければ寿司でもメロンでもないんだな、と自由は小学生のようなことを考えていた。
スクランブルエッグがちょうど良い半熟具合で、気に入ったのか、自由は美味そうにバクバクと口に運んだ。
それと一緒に、温かい朝ご飯なんてここ暫く食べてなかったな、と余計なことも思い出した。
「アンタってさ……、特定の人とかいないカンジなの?」
「──特定?」
葉山は朝あまり食欲がないのか、コーヒーと新聞の合間にサラダだけを口に運んでいた。
「俺みたいにさ。拾ってはヤッてってかんじなの?」
「なに、気になる?」
葉山は不敵な笑みを浮かべ、食べる手を止めた。
「モテんの?」
「どう思う?」
含んだもの言いの葉山に苛立った自由はジロリと睨んだ。
「フォークで目を刺してやりてぇ」
「なんだよー乱暴だなあ……。自由くんは? モテるの?」
「バーカ! 金もねー将来もねーバンドマンなんかモテるわけねーだろ!」
あまりにも自信満々に自由が言ってのけるので葉山は腹を抱えて大笑いした。
「でも良い──俺が選んだ道だから」
そう強く言い切ると、最後の一欠片まで自由は出されたものを綺麗に平らげた。
ご馳走様でした。と礼儀良く手を合わせる自由を優しい大人の眼差しで葉山は眺めた。
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