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事務所のスタジオに戻るとすぐに撮影は始まった。
ボサボサに伸びていた自由の髪はアシンメトリーに前髪を重めに残し、後ろは首筋が丸見えになる程スッキリと切られ、三回されたブリーチとカラーのせいで地肌は少しチリチリと痛んだ。
日本人には不自然なアッシュ寄りの金髪にされ、生まれて初めてハーフ被れな色のカラーコンタクトを入れられた。
他のメンバー3人も今までした事も無いような髪型とやたら丁寧に整えられた眉がまるで別人のようで、お互いに滑稽を通り過ぎて笑いのひとつすら出なかった。
スタイリストから渡された衣装は、いつも着ているそれぞれが買い揃えた安い古着からは一気に懸け離れ、カジュアルスーツ調のきちんとした衣装で、黒を基調とした全員がほぼ同じデザインテーマの、襟の形やコサージュ、ストールなど少しずつポイント違いに作られたものだった。
撮影中はカメラマンの指示で何度かメンバー同士近距離に立ち、アイドルのようなポーズもした。
不慣れな4人は操り人形のようにカクカクと言われた通りに形を変え、硬い表情を何度もマネージャーに注意されながらどうにか作り上げた笑顔とは裏腹に、心の中は延々と微かに残った自我が慌てふためいては混乱していた。
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