track.2

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「はい、シュピーレンムジークです。はい、お世話になっております…………」  毎日特に決まった仕事もない自由の日常は、所属事務所の電話番と所属するアーティスト達に来た手紙やらなんやらを仕分ける仕事だ。  何度となく取った電話だが、自分の所属するバンドの名前を指名されることは未だ一度もなかった。    メジャーデビューしてから出したシングルは半年前のたった一枚だけ。  事務所の期待に反してなのか、想定内なのか、それは全く売れず、チャートは見事圏外。  地方のCDストアやショッピングモールを回るも世間の反応は薄かった──。  梱包した段ボールに宅配便の荷札を貼り付けながら自由は昨夜起きた恐怖の大失態を思い出していた。  怪しい目で笑うあの男──。  どこでどう会ったのか、全く思い出せない──。  一緒に呑んでいたのはどうしてなのか、それだじゃなく── 「……男に……ホモに……掘られるなんてぇ……」  頭を抱えて自由は小さく呻く。 《売れない奴は────、退場だよ────》  あの言葉がピアノ線のような強さで自由の首に巻きついて、自由の呼吸を邪魔しては苦しめた──。
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