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──いや、これは雰囲気イケメンってやつだ。顔は普通、きっと普通──と自由は無駄に心の中で抗った。
「──もういいの?」
考え事にすっかり箸が止まっていた自由の顔を男は覗き込む。
何かの起動スイッチを押されたかのように自由はハッと現実に戻り目を見開いて男に強く告げた。
「特選カルビと和牛特上タン塩追加で!」
「はあ~~っ、食った食ったぁ~~、幸せ~~!」
自由は絵に描いたようにぽこりと出た胃を満足そうに撫でていた。
「本当によく食べてたねぇ……。あ、端数は持つよ。一人1万5千円ね」
「へっ…………」
「奢るなんて一言も言ってないよ? 俺」
自由は身体を岩のように硬直させ、さっきまでピンク色に逆上せていた頬からは一気に血の気が引いて真っ白になっていた。
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