track.3

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track.3

──騙された! 騙された!!  自由は何度も頭の中で自分の愚かさに、男のズルさに、脳味噌が沸騰するかと思うほどの怒りを爆発させていた。  あの後「──奢って欲しい?」と、男はニタリといやらしく笑った。  そこまでが奴のシナリオで最初からそのつもりで公園にいた自由に声を掛けたのだ。  同じ男なのになぜそれが読めなかったのか、自由は自分自身にひどく呆れるが、まさか同じ男の自分がそんな対象になるとは考えが全く及ばなかったのだ。  自由は、朝飛び出してきたばかりのマンションにまた連れ戻される。  上昇するエレベーターの中で必死に男を諭したが、全く聞き入れてもらえず男に引っ張られるまま部屋に連れて行かれる。  貧乏生活で貧弱な自由の身体は自分より10㎝ほど背の高い男に簡単に操られた。  寝心地の良いあのベッドに軽く放り投げられ、意識がはっきりとした中で口付けられる。  ただでさえ頭はパニック状態なのに、自分と同じ男にキスされ思考が追いつかず、自由は驚く余裕もなかった。何か喋ろうとすると舌が中に入ってきて声を奪われる。
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