第二話 『常識の勉強と魔法の練習』

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 今後の目標を明確に定めてから、まず俺は情報収集をしようと思った。  のだが……かといってルフィナにいろいろと質問するのは悪手である。  なにしろ、俺は寡黙なキャラだと勘違いされているからだ。  急に態度を一変させて、こちらから積極的に話しかけるのは不自然だろう。  それに俺が知りたいことには、この世界の常識も含まれている。  なぜそんな当たり前のことを訊くのか、と怪しまれたくはない。  だから俺は、ルフィナから話しかけてこない限り無言を貫いた。  はやる気持ちを押さえつけて、好機が訪れるのを静かに待った。  そして屋敷を出てから、俺の体感で二時間ほどが経過したとき。  人気(ひとけ)のない川沿いの道端で、ルフィナは荷馬車を停めた。 「一旦ここで休むぞ」 「……ああ」  やっと休憩のようだ。  ずっと座りっぱなしで疲れていたからありがたい。  最初に危惧した通り、尻へのダメージもあるしな。 「私は少し馬の世話をするが、そちらはどうする?」 「えっと、そうだな……」  ルフィナに訊かれて、俺は少し考えた。  気持ち的には普通に体を休めたいが、ここにきてようやく自由な時間を得たんだ。  それを無為に過ごすのはもったいない。  なので、 「師匠を手伝わなくてもいいなら、いまのうちに自分の荷物を確認してくる」 「そうか。だが、そう長くは休まないつもりだ。あまり荷台を散らかすなよ?」 「善処する」  俺はそれだけ言うと、すぐに荷馬車の後ろに回み、荷台へと乗り込んだ。  多くの木箱が左右にずらりと並んでいる。  雨よけの(ほろ)に覆われて、荷台内はちょっと薄暗いけど、視界に困るほどではない。  とりあえず入ってすぐの木箱を見てみると、蓋の上に『衣類』という文字があった。  ご丁寧なことに、なにが入っているのかをあらかじめ書いてくれているらしい。  他には『食器』や『寝具』、それに『武具』なんて物まで置いてある。  だが、もっとも俺の興味を惹いたのは『学用品』と書かれた小さな木箱だった。  まずはコレから確認しようと思い、さっそく蓋を開けてみる。  すると小箱の中には、羽ペンや白紙の羊皮紙などがいっぱいに詰め込まれていた。  まさしく勉強に使いそうな物ばかりである。  なら、なにか教科書のようなものだって――  ……あった!
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