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箱のうちを軽く物色してみたところ、羊皮紙の下に二冊の本が隠れていた。
期待通りの展開に、思わず口もとが緩む。
本とは、すなわち知識の塊。
厚みはそれほどないが、これを読めば異世界のなにかしらは学べるはず。
ただ、休憩時間はあまりないので急がないといけない。
荷馬車に激しく揺られながら読書するのはキツイからな。
そんなことをすれば絶対に酔う。
てなわけで、俺は小箱から手早く本を取り出すと、すぐさまそれを開いて読み進めていく。
そして。
もともと速読系の読書家だったことに加え、本のページ数も少なかったおかげで、俺はさほど時間を要さず二冊とも読了した。
一応、その内容を俺なりにまとめてみる。
一冊目は『ダミア王国の歴史』という本。
著者の文法的に、おそらくは子供向けに作られた教養書だ。
そこには題名通り、ダミア王国という大きな国のなりたちがつづられていた。
また、これまで俺が渇望していた《常識的な情報》も随所に記されてあった。
たとえば『ダミア王国はいま、アスティア最大の国になりつつある』という冒頭の一文。
これで、この世界の名前が《アスティア》であると判明した。
他にも分かったことはある。
そのなかでも俺がとりわけ驚いたのは、アスティアに複数の人型種族が存在していることだ。
人間、魔族、獣人、竜人、巨人、エルフ、ドワーフなど。
これで全部とは限らないが、少なくとも文中にはこの七種族が登場した。
おまけに人間と魔族は、だいたい二百年の間隔で、過去に何度も大きな戦争を繰り返しているとのこと。
もちろん魔族を率いるのは魔王であり、相対する人間は勇者を旗印としていた。
そしていずれの戦いも、最終的に勇者が魔王を斃すことで人間側が勝利している。
だけど、たとえ戦争が終わっても、その爪痕は簡単には消え去らない。
特に四度目の大戦――第四次人魔大戦で、人間族は甚大な被害を受けた。
当時の人口の四割を失い、それまで長く君臨していた大国が滅亡したのだ。
しかしそんな折り、当代の勇者が行動を起こした。
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