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祖国を失った人々に新たな居場所を与え、疲弊した戦後の世に希望をもたらすべく、ともに魔王討伐を成し遂げた仲間――つまりは英雄たちと協力してひとつの国を興す。
それが、ダミア王国である。
初代の王は言うまでもなく勇者であり、ダミア王国の王族にはその血が流れている。ゆえにダミア王国は『勇者の国』とも呼ばれているらしい。
それに複数の英雄が建国に関わったことから、王国内では英雄を崇拝する者がかなり多いとか。きっと、英雄の末裔に手を出したなら、貴族であっても反乱が起きかねない状況になるだろう。
ソースはレイだ。
俺の現在地がダミア王国であることは、英雄のくだりを読んでいるうちに察した。
これは勘だが……この本が荷台にあったのは、レイに自分がやらかしたことの重大さを再認識させるためだと思う。
日本の鑑別所や少年院の一部にも、更生を促す目的で道徳の本が何冊か置かれていると聞くし。
たぶん、それと同じような理由でバグウェル家の誰かがこの本を小箱に入れたんじゃないかな。
俺とレイは別人だから更生もなにもないんだけど、まあ、おかげであれこれと常識を学べたので文句はない。
もしも英雄の信奉者とかにばったり出くわしたら、問答無用でリンチにされそうで少し怖くなってしまったが……。
うだうだ悩んでいても仕方ないし、ひとまずそれはさて置いて、さくさくっと次の本に進んでしまおう。
二冊目は『アルメアの魔法入門書』である。
これは、アルメアという名の大賢者が書いた異世界ならではの教本だ。
魔法の基礎的な説明と使い方、それからいくつかの魔法が載っていた。
科学の世界からやってきた俺には、とても新鮮で興味深い内容である。
そのためか、ついつい、一冊目の歴史書よりも熱心に読んでしまった。
とりあえず初歩的なところから触れていこう。
まず魔法は、世界の法則を強制的に塗り替えて起こす現象のことだ。
エネルギー源は《魔力》であり、誰もが生まれつき体内に宿している。
それは、いまの俺の身体だって例外ではないだろう。
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