第二話 『常識の勉強と魔法の練習』

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 なので魔法陣は、その特性を利用して《魔道具(まどうぐ)》等の作成にも用いられているらしい。  魔法具とは、魔力と親和性の高い物質に魔法陣を刻み込んだマジックアイテムのことだ。  主に懐中電灯のように光るものや、調理用の火を起こすものなどがあり、いまや人々の生活には欠かせない物となっているとのこと。  しかし、魔法陣にはデメリットもある。  魔法陣の構築には専用の魔法式を使うのだが、その演算プロセスは詠唱用とは比較にならないほど難しいようで。  あまつさえ魔法式を演算したあとには、それらを繊細かつ精密に組み合わせて完璧な陣を描かなくてはならない。  つまり高度な(魔法式の)演算能力に加えて、芸術家のごとき描写センスまで求められるわけだ。  さらに発動させる魔法によっては、魔法陣を描く素材にもこだわる必要がある。  魔力との親和性が高いことだけではなく、どれだけ強度があるかも大切な要素なのだ。  魔法は、その規模に比例して消費魔力も上がっていく。  そして魔法陣を描く素材には流し込める魔力量に上限があり、それを超過して魔力をそそげば素材自体が壊れてしまう。  一般的に普及している素材だと、下級魔法を使うくらいの魔力量で許容限界に達するらしい。  また高級品として扱われる物でも、上級クラスの魔法には耐え切れず、中級魔法あたりで頭打ちになるっぽい。  本によれば、一応は強力な魔法でも持ち堪えられる超素材もあるみたいだけどな。  それを材料に作ったマジックアイテムは魔道具の上位版――魔導器(まどうき)と呼ぶそうだ。  希少ゆえに価値が高く、上流階級の者でもなかなか入手できないと書かれていた。  バグウェルの家名を失って、ただの国民Aへと成り下がった俺には縁遠い代物だ。  あと有益な情報は……本の末尾にある魔法の一覧表だろうか。  そこには魔法の名称や効果などが種類ごとに明記されており、それに加えて各魔法に該当した魔法式と詠唱文まで一緒にまとめられていた。  とはいえ、どの魔法も控えめなものばかり。  魔法は規模と難易度によって、  初級、下級、中級、上級、特級、超級、覇級、神級――  この八段階に分けられている。  そして、この本に載っているのは初級と下級の二階級だけ。  まあ、これは入門書だからな。  初心者にはそのあたりの魔法が妥当なんだと思う。
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