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とか思ったりもしたのだが、しかし俺に魔法が使えないとなれば……。
……いいや、落ち着け。
あまりネガティブになるな。
そう。たんにレイが魔法の勉強をサボっていたから未熟な腕前なのだとも考えられる。
これまで俺が聞かされて知った、あのクソガキの素行を鑑みれば十分にあり得ることだ。
所詮はすべて憶測の範疇にある。
たしかな確証なんてなにもない。
なら、どちらにせよ――
「実際に、試してみるしかないか……」
そう結論付けた俺は、ダミア王国の歴史本だけ小箱に戻すと、魔法入門書を片手に荷台を出た。
すると、ちょうど馬の世話をしているルフィナと目が合ったのでとりあえず声をかけておく。
「なあ、少し魔法の練習をしてくる」
「魔法の練習だと? いまからか?」
「いまからだ。とはいっても、軽く試すだけだからあまり時間は取らない」
「……おかしいな。侯爵から、レイは努力嫌いだと聞かされていたのだが」
ルフィナはわずかに首を傾げ、俺にうろんげな眼差しを向けてくる。
ミスった!
長々と不安を抱えるのがイヤで、無自覚にレイの演技をないがしろにしていた。
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