第二話 『常識の勉強と魔法の練習』

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「さて……」  近くを流れる川の前までやってきた俺は、すぐさま入門書を開いて魔法の一覧表を眺めた。  これから魔法の行使を試みるわけだが、最初はやっぱり初級魔法にするのがいいだろう。  八階級の最下位だけあってこれが一番簡単そうだし、威力が弱い魔法ばかりなので、万が一失敗してもあまり被害は出ないはずだ。  それに初級魔法の効果は単純ながらも、俗に《生活魔法》と呼ばれるくらい利便性が高い。  小さな火をつけるだけでも火種にはなる。  少し水を操作するだけでも洗濯に役立つ。  これぞシンプルイズベストって感じだ。  微々たる魔法でも覚えていて損はない。  じゃあ、いっちょやってみるか。  まず俺は魔法式の演算に挑戦しようとする。  だが……いきなり問題に直面してしまった。  ド素人の俺からすれば、魔法式なんてどれも奇妙な記号の集まりにしか見えないのだ。  さながら、ガリレオみたいな天才学者が不意に閃いて書き殴った、常人には理解できない謎の方程式を眺めているような気分である。  それでも、そっこうで挫折するわけにもいかず、俺は魔法式の演算方法が解説されたページを頻繁にめくっては読み返す。  そうやって徐々に知識を深めていくうちに、ひとつ思った。  パッと見だと、魔法式は難しそうな見た目をしているけど。  これ、専門用語と式の法則さえ分かったら意外と簡単かも。 「…………ふむ」  とりあえず俺は脳内で魔法式を演算してみる。  あくまでもお試しなので、魔法式は適当に選んで《小さき炎(ミニフレイム)》にした。  これは指先にとろ火を生み出すだけの地味な初級魔法だ。もちろんタイプは火属性。  で、入門書にあるその魔法式を視界に収めながら、俺はさっそく演算を開始する。  ――と、一瞬で式の解が導き出された。 「……あれ?」
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