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俺はその結果に首をかしげる。
なにいまの……演算が終わるの早すぎない?
というか、俺には演算した自覚すらなかったぞ。
ほら、たとえば『1+1』って式を見たら意識せずとも『2』って解答が出るだろ?
あんなふうに、魔法式に目を通しただけで、なぜかパッと答えが頭に浮かんできたのだ。
長く慣れ親しんだ足し算とは違い、魔法式は目下こうして学んでいる最中だというのに。
どういうわけか、初っ端から速算に成功してしまった。
不思議。
俺の学力はそんなに高くないはずなんだが……。
まさか、ここにきて隠れた才能が開花したのか?
それは……いくらなんでも都合が良すぎるよな?
…………まあいいか。
別に困ることでもないし、深く考えるのは後回しだ。
いまはあっさり演算できてラッキーとだけ思っておこう。
では気を取り直して、次は魔法の詠唱に取りかかる。
本当だと詠唱は演算と同時進行しないとダメだが、いきなりそれをするのは難かしそうなので、初めは普通に詠唱を唱えるだけでいいだろう。
何事にも順序ってものがあり、無理にトライしてもどうせ失敗する。
だから本番の前準備として、俺は《小さき炎》の詠唱文を音読する。
「原初の素、ささきゃ――」
あっ、噛んだ。やり直し。
「原初の素、ささやかにゃる――」
ちくしょう! また噛んだ!
……ある意味で言語の壁だ。
魔法の詠唱文には《魔法言語》とやらが使われている。
俺は、さっき荷台で入門書を読んでいたときにこの言語を習得した。
初めて詠唱文を見た瞬間、言葉の意味や文法をすべて理解したのだ。
俺がダミア王国語(?)をマスターしたときと同じようにな。
しかし、言葉の意味が分かっても発音の仕方はまた別だ。
特に魔法言語は独特のアクセントがあるので言いづらい。
すぐに舌が慣れることはなく、どうしても途中で噛んでしまう。
演算は楽勝だったのに、詠唱部分でつまずくとは……。
ままならないな。ただひたすらに練習あるのみ、か。
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