第二話 『常識の勉強と魔法の練習』

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 俺はその結果に首をかしげる。  なにいまの……演算が終わるの早すぎない?  というか、俺には演算した自覚すらなかったぞ。  ほら、たとえば『1+1』って式を見たら意識せずとも『2』って解答が出るだろ?  あんなふうに、魔法式に目を通しただけで、なぜかパッと答えが頭に浮かんできたのだ。  長く慣れ親しんだ足し算とは違い、魔法式は目下こうして学んでいる最中だというのに。  どういうわけか、初っ端から速算に成功してしまった。  不思議。  俺の学力はそんなに高くないはずなんだが……。  まさか、ここにきて隠れた才能が開花したのか?  それは……いくらなんでも都合が良すぎるよな?  …………まあいいか。  別に困ることでもないし、深く考えるのは後回しだ。  いまはあっさり演算できてラッキーとだけ思っておこう。  では気を取り直して、次は魔法の詠唱に取りかかる。  本当だと詠唱は演算と同時進行しないとダメだが、いきなりそれをするのは難かしそうなので、初めは普通に詠唱を唱えるだけでいいだろう。  何事にも順序ってものがあり、無理にトライしてもどうせ失敗する。  だから本番の前準備として、俺は《小さき炎(ミニフレイム)》の詠唱文を音読する。 「原初の素、ささきゃ――」  あっ、噛んだ。やり直し。 「原初の素、ささやかにゃる――」  ちくしょう! また噛んだ!  ……ある意味で言語の壁だ。  魔法の詠唱文には《魔法言語》とやらが使われている。  俺は、さっき荷台で入門書を読んでいたときにこの言語を習得した。  初めて詠唱文を見た瞬間、言葉の意味や文法をすべて理解したのだ。  俺がダミア王国語(?)をマスターしたときと同じようにな。  しかし、言葉の意味が分かっても発音の仕方はまた別だ。  特に魔法言語は独特のアクセントがあるので言いづらい。   すぐに舌が慣れることはなく、どうしても途中で噛んでしまう。  演算は楽勝だったのに、詠唱部分でつまずくとは……。  ままならないな。ただひたすらに練習あるのみ、か。
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