第二話 『常識の勉強と魔法の練習』

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 そう――《普通》の人間は魔力に直接干渉できない。  ってことは、魔力に干渉できる《例外》だって居るわけだ。  そのような存在については、まったく言及されていなかったが。  もしや、入門向けの内容ではないからあえて記載を省いたのか。    まあ、あれだ。  とにかく、これでレイに魔法の才能がないという線は薄くなった。  いまだ入門書を渡されるのは、おそらく今日まで努力を怠ってきたからだろう。  そうだとしたら、自力で魔力を操れる能力も宝の持ち腐れである。  なればこそ、この憑依が解けるまでは俺が有効活用してやろう。  まずは、その第一歩。  無詠唱での魔法行使に挑む。  一応、《小さき炎(ミニフレイム)》の詠唱で魔力が通る経路はすでに記憶している。  短時間でもあれだけ練習したら、そのくらいは嫌でも覚えるさ。  それに、あんまり複雑な経路じゃなかったのも要因のひとつだ。  詠唱していたとき魔力は心臓から頭部へ、そして頭部からまた心臓に戻り、最終的には右手の先へと集まっていた。  だから俺はその感覚を思い出しながら、魔力を適切に動かし、それと合わせて魔法式のほうも演算していく。  脳みそはひとつだから、同時にふたつの作業をこなすには多少のコツがいるけど。  幸い魔法式は速算が可能なので、ぱっぱと魔法の《基盤》を組んだあとは、魔力の操作だけに集中できる。  そして。  俺の意思に従い、右手の人差し指に魔力が集結した直後――  ぼうっ、と。  指先に小さな火がともった。  それを見て俺は、  「よっしゃ……!」  と思わず歓喜の声を上げる。  ようやく魔法が使えたことで、感動と達成感が胸を満たした。  けれど、風にゆれる魔法の火を眺めているうちにふと気づく。  そういや……俺、火傷の危険性を完全に失念していたな。  火を扱う魔法であれば、まずそこを考えて然るべきだろうに。  魔法を使うぞ、と意気込むあまり現実的な思考を欠いていた。
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