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そう――《普通》の人間は魔力に直接干渉できない。
ってことは、魔力に干渉できる《例外》だって居るわけだ。
そのような存在については、まったく言及されていなかったが。
もしや、入門向けの内容ではないからあえて記載を省いたのか。
まあ、あれだ。
とにかく、これでレイに魔法の才能がないという線は薄くなった。
いまだ入門書を渡されるのは、おそらく今日まで努力を怠ってきたからだろう。
そうだとしたら、自力で魔力を操れる能力も宝の持ち腐れである。
なればこそ、この憑依が解けるまでは俺が有効活用してやろう。
まずは、その第一歩。
無詠唱での魔法行使に挑む。
一応、《小さき炎》の詠唱で魔力が通る経路はすでに記憶している。
短時間でもあれだけ練習したら、そのくらいは嫌でも覚えるさ。
それに、あんまり複雑な経路じゃなかったのも要因のひとつだ。
詠唱していたとき魔力は心臓から頭部へ、そして頭部からまた心臓に戻り、最終的には右手の先へと集まっていた。
だから俺はその感覚を思い出しながら、魔力を適切に動かし、それと合わせて魔法式のほうも演算していく。
脳みそはひとつだから、同時にふたつの作業をこなすには多少のコツがいるけど。
幸い魔法式は速算が可能なので、ぱっぱと魔法の《基盤》を組んだあとは、魔力の操作だけに集中できる。
そして。
俺の意思に従い、右手の人差し指に魔力が集結した直後――
ぼうっ、と。
指先に小さな火がともった。
それを見て俺は、
「よっしゃ……!」
と思わず歓喜の声を上げる。
ようやく魔法が使えたことで、感動と達成感が胸を満たした。
けれど、風にゆれる魔法の火を眺めているうちにふと気づく。
そういや……俺、火傷の危険性を完全に失念していたな。
火を扱う魔法であれば、まずそこを考えて然るべきだろうに。
魔法を使うぞ、と意気込むあまり現実的な思考を欠いていた。
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