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「――――ッ」
頭がくらりと揺れる。
口の中は熱いのに、背筋は凍りそうだ。
ああ、もう居ても立ってもいられない。
とりあえず、ルフィナを探しに行こう。
この不安が杞憂ならいいが、本当に置いて行かれたとなれば、早めに対処する必要がある。
いまの俺にとって現状は、砂漠のど真ん中で放置されているのと変わらない。
初動が遅れるほど、致命的になっていく。
そうして俺は危機感に急かされるかたちでルフィナの捜索に出かけた。
腰のあたりまで伸びた草花を掻き分けながら山林の中に足を踏み入る。
まだ空は少し明るかったが、乱立する木々の陰により周囲は暗く視界が悪い。
この場はもう夜も同然で、目視だけに頼って人を探すのは望み薄だろう。
なので、俺はいまだ癒えない舌の痛みを堪えつつ、
「おーい! 師匠! どこだー!?」
大声で探し人のルフィナを呼ぶ。
だけど……何度叫んでもまったく返事は戻ってこない。
置いて行ったはずの俺の声を聞いて逃げているのか。
はたまた、山の奥まで枝を拾いに行っているだけか。
確かめなければ……。
「ええい、めんどうな……」
長く茂った草が足もとを隠して歩きにくいうえ、木々の隙間から覗く闇色の風景にはなんとも言えない不気味さがある。
できればあまり深くまで進みたくないのだが、それでもルフィナいわくこの山には積極的に人を襲う魔物は居ないらしいので、俺は本能的な恐怖を飲み込んでやむなく捜索を続ける。
定期的に大声を出して呼びかけながら、行く手を阻む邪魔な植物を乱暴に踏み倒していき、まるで前方の暗闇にいざなわれるようにゆっくりと歩みを進めていく──が、しばらく山を登ったところで、不意に近くの茂みがガサガサと揺れた。
「師匠……?」
俺は反射的にそちらを確認する。
しかし、そこには誰の姿もない。
代わりに――ガルルルルッ、と。
獣のような唸り声が耳に届いた。
俺はびくっと思わず体をすくませる。

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