平安京の月

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俺は直ぐに父の許に連れていかれた。 父は俺を見ると怪我は無いかと聞いた。 それから金と大津の寺の住職に宛てた文を俺に持たせて逃げろと言った。 お前は嵌められたのだと、とにかく今は身を隠し生き延びろと・・ 俺は父の事が心配になった。 俺を逃がしたと知れたら父の命も危なくなる。 だがそんな俺に父は笑いながら諭した。 大丈夫だ、此れでも左大臣の職に就いた身だ、お前さえ無事なら本当に手をくだした者を探し出しお前の無実の証しを起てる。 其れまでの辛抱だ。 そう言って俺を抱いてくれた。 俺は発つ前に産まれたばかりの妹姫と母じゃの顔が見たいと父に許しを願った。 父はあまり時はないぞと言いながらも許してくれた。 俺が父の部屋を出ようとした時だ、大勢の足音が庭に響いた。 父は俺を秘密の通路に逃がしその扉に鍵を掛けた。 (行け!我聶丸、必ず生き延びるのだぞ) その声に促され俺は屋敷の外に出た。 そして振り返って屋敷を見た。 だが有ろう事か俺の屋敷から火の手が上るのが見えた。 俺は今来た道を急いで戻った。 父の部屋に入ろうとしたが隠し扉に鍵が掛けられ開かない。 そのうちに人が争う気配がする。 俺は通路を戻り門から屋敷に入ろうと廻りこんだ。 不思議な事に門の周りには侍の姿が無かった。 だがな、それもまた罠だった。 俺は屋敷に入り部屋と言う部屋を廻り父と母を捜した。 辺りには父の護衛に雇った侍達の死骸が散乱していた。 俺は母じゃと妹姫の部屋に向かった。 だが其処にも在るのは当家の使用人の死骸だけだった。 俺は諦め切れず父の部屋に向かった。 其処で俺は無残に切り刻まれた父の姿を見つけたんだ。 駆け寄って父を抱き起こした。 父は俺に気付くと(逃げろ、罠だ・・)そう言って息をしなくなった。 直に侍達が俺を捕まえに来た。 俺は投獄され首を刎ねられる事になった。 そして処刑の日、俺は四条河原に引き出され役人が俺の罪状を読み上げた。 『この者、乱心の上養父母を殺害し、その屋敷に火を放った罪により斬首の刑に処す。 その首は30日の間晒し、以後は鳥飼山に捨て置く物とする』 俺は耳を疑う、俺が家族を殺した罪人として処刑される! その時だ、俺は見物の人の中に九重姫の顔を見つけた。 怒りが俺に血の涙を流させた」
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