我聶丸

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気が付くと私はバスの外に放り出されていた。 身体中が痛い・・ 辺りは鬱蒼とした森の中でバスは見えない。 (がさがさ) 急に何がの近付く音で立ち上がろうとした。 脚が動かない、無理に動かそうとすると激痛が走った。 (がさがさ) 恐怖が此処に居てはいけないと追いたてる。 私は泣きながら手に掴んだ枝を杖代りに痛む脚を引き摺りながら歩き出した。 暫く行くとバスが見えた。 (彼処まで行けば・・) ほっとして近付こうとした瞬間、物凄い音と伴にバスが炎上した。 私はその爆風に飛ばされる。 谷底の川の中に墜ちた。 「おい・・ おい大丈夫か?」 誰かに揺り動かされ気が付いた。 目を開けたが暗くて何も見えない。 「そうか人間には暗いか。 待ってろ、今灯りになる物を探す」 声が遠ざかる。 私はまた気を失った。 目を覚ますと藁の中に寝かされていた。 側には焚き火の炎が揺れている。 起き上がろうとしたが身体が動かない。 目だけを動かして辺りを見る。 岩だらけの洞窟の中のようだった。 「此処は何処だろう? 皆は・・」 そう思った時、あのバスの炎上した瞬間を思い出した。 仲良しの友達の顔が頭の中を通り過ぎる。 (お願い、皆無事でいて) そう願いながら涙が溢れた。 「痛むのか? おかしいな・・ あの薬で効いた筈なのに」 その声の方を見る。 焚き火に照された男の人が見えた。 端正な顔立ち・・ 優しそうな笑顔・・ でも、薄暗いせいか肌の色が赤黒く見える。 長い髪も濃い赤毛で、その瞳の色は吸い込まれるくらい綺麗な紫色・・ (外国の人? でも日本語・・だよね?) 「何だ?俺が恐いのか? 心配ない。 確かに目覚めたばかりで腹は減ってるが俺は人間なんて食わない」 (えっ? 人間なんて・・食わない? この人・・人間じゃないの? 何?私死んだの? えっ? 何で?どうして?) 「お前・・ 腹が減ってるのか?」 そう聞かれて、かろうじて正気に戻る。 「あの・・私・・」 「あっ、起き上がるな!」 「えっ?」 その言葉に驚いて起き上がる。
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