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「やめろ。
人間でも女だろ?
そんな姿で俺の前に立つな。
女なんて何百年も抱いてないんだ、止まらなくなる」
そう言われ自分を見る。
私は何一つ着ていない裸だった。
「えっ?
え~っ!
ふ、服!私の服!」
「ああ、あれか・・
濡れてたし、破れてたしな・・
それに薬を塗るには裸にしないと・・何せ全身が・・」
「いやぁー」
私は思わず彼の頬を平手で叩いた。
「何するんだ、助けてやったんだぞ。
目覚めたばかりで腹だって減ってるのに、お前を此処に運んで村から藁も持って来てだ・・
其から薬を作るために薬草を探して山を歩いて・・
其なのに礼は言わずに平手打ちか?」
私は胸を両手で隠して座り込んだ。
「ごめんなさい、でも」
「心配ない。
薬を塗ったのは背中と足と腕・・
それと・・胸だけだ。
女の大切なところは触ってない」
「胸だけ・・?
大切な・・ところ?」
「だから、子供を作る処だ」
「子供を?作る?」
「煩いな、あのまま放って置いたら川に流されて後は野良犬の餌だ。
その方が良かったのか?」
私は言葉に詰まる。
「ごめんなさい・・
助けてくれて・・
ありがとう」
「とにかく寝床に入れ。
薪が無いから取ってくる。
それと、お前蛇と兎どっちが好きだ?」
「ヘビ?うざぎ?」
「ああ、どっちだ?」
「う、うざぎ」
「よし、分かった。
少し待ってろ」
彼は私に満面の笑みを残し何処かへと消えた。
「何?
あの人・・
いや、人じゃなかったのよね」
素肌に藁が少しだけチクチクとする。
でも彼が塗ってくれた薬のお陰か痛みは少しずつ遠退いていった。
時期に足音が近付く。
彼が山ほどの薪を抱え戻ってきた。
薪を置くと自分の着ている着物を脱いで私の側に置く。
「それ、着てろ。
兎が焼けた頃だ」
そう言って引き返して行った。
「此を着ろって・・
なんか、臭いんだけど・・」
それでも裸よりはましだ。
着てさえしまえば臭いには慣れていく。
「はあーっ。
どうにか我慢出来る・・
そう言えばうざぎ・・?
えっ?
焼けたとか言わなかった?」
彼が戻ってきた。
両手に何かの焼いた肉の塊を抱えている。
「おい、起きて食え。
腹が減ってると傷も治らない」
そう言って私に塊を渡す。
それは真っ黒に焼けてはいるが、確かにうさぎの形をしていた。
「う、うざぎって、好きかって・・
お肉の事?」
彼は私の反応に首を傾げた。
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