我聶丸

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「何か変だな・・ そうかお前、着物を着たままか」 そう言うと私が来ていた着物を剥ぎ取った。 「ひゃっ」 「何だ? この方が暖かいぞ。 もっと此方に来い。 尻が出てるじゃないか」 そう思うと私の身体を自分の身体で包むように抱き寄せた。 大きな手が私の背中を押さえる。 自分でも驚くぼど心臓が高鳴る。 驚き過ぎて声も出せない私を抱きながら、彼は平然と寝息を発てた。 (何なのこの人・・ あっ、人じゃなかったのよね・・) 彼の腕の中から顔を見上げる。 「寝ないのか? それとも俺に発情したのか? 発情したなら抱いてやってもいい。 お前・・俺の好きだった女に似てるからな」 私はもう一度彼に手を挙げる。 その手を彼が捕まえた。 「なんだ違うのか・・ お前な、違うならそう言え。 いちいち叩かれたらいくら俺でも身がもたない」 彼はそう言うと私の手を離す。 また直ぐに寝息を発てた。 彼を見ながら不思議に思う。 今日はもしかしたら友達が死んでるかも知れないのに・・ 私だって死んでたかも知れないのに・・ 其なのに人でもない彼に裸で抱かれながら、私の胸は音が聞こえるぼど高鳴っている。 今のこの状況をどう受け止めたらいいのだろう・・ 急に彼が身体を動かした。 冷たい空気が藁の中に入った。 私が身を縮めると彼が私を抱き締める。 自分の身体を覆う藁を私の背中に集め、少しだけ力を入れて私の身体を包んだ。 (暖かい・・) 彼の手が私の髪を撫でる。 (起きてるの?) 彼の顔を見上げる。 でも顔は見えなかった。 (此れからどうなるんだろう? ママ達心配してるかしら? いや、どうせ私が事故に遭った事にも気付いてやしない) いつもそうだ。 小学校の卒業式も中学校の入学式も、勿論高校だって、あの人達は私の側には居なかった。 父にも母にも其々に恋人がいた。 父は仕事ばかりで母をいつも一人にした。 そのうち母はカルチャースクールに入り浸り、そこの講師と付き合いだした。 父はそれを知ると責める処か他の女性に走った。
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