我聶丸

9/9
前へ
/120ページ
次へ
次の朝、目覚めると彼はもう起き出していた。 私を見ると優しそうに笑う。 「今日は俺の時代に行こう」 「貴方の時代に? 私も行けるの?」 「ああ俺となら行ける。 それにお前を助けた時に少しだけ俺の血をお前に飲ませたからな。 時空の扉を通る間くらいなら人間でも耐えられる筈だ」 「筈だって・・ それに貴方の血を飲ませたって・・ 聞いてないです」 「お前な、たかが人間に薬草だけであれだけの傷が一晩で治せるか? 俺が見付けた時お前は死にかけてたんだぞ。 正直そのまま放って置こうかと思ったが、お前が俺に(助けて)と言ったんだ。 それにお前は昔俺が惚れた女に似てたからな・・」 その言葉に目の前が真っ暗になる。 「惚れた女・・」 じゃ、夕べのは私じゃなくてその人に・・ 初めてだったのに・・ 怖かったのに・・ あんな恥ずかしい事されたのに・・ 貴方が好きになり掛けてたのに・・ 私にじゃなかった? 「どうした? 急に静かになって? まだどこか痛むのか?」 私は彼をじっと見る。 (好きじゃなくても出来る・・ あの時彼はそう言ってから私にキスを・・) 彼の言葉に始めた回想なのに 思い出すと顔が赤くなる。 あの感覚が甦り、体が疼いた。 「まだ熱があるのか?」 彼の手が私の額に触れる。 「まだ無理か・・ お前、今日はここに残れ。 俺は戻って・・」 「嫌・・」 「なんだ?」 「嫌なの・・ 一人にしないで・・」 涙が溢れた。 彼は私を見る。 暫くすると私を抱き締めた。 「何時の時代も女ってやつは面倒だ・・」 「嫌に・・なった?」 「いや、可愛い」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加