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次の朝、目覚めると彼はもう起き出していた。
私を見ると優しそうに笑う。
「今日は俺の時代に行こう」
「貴方の時代に?
私も行けるの?」
「ああ俺となら行ける。
それにお前を助けた時に少しだけ俺の血をお前に飲ませたからな。
時空の扉を通る間くらいなら人間でも耐えられる筈だ」
「筈だって・・
それに貴方の血を飲ませたって・・
聞いてないです」
「お前な、たかが人間に薬草だけであれだけの傷が一晩で治せるか?
俺が見付けた時お前は死にかけてたんだぞ。
正直そのまま放って置こうかと思ったが、お前が俺に(助けて)と言ったんだ。
それにお前は昔俺が惚れた女に似てたからな・・」
その言葉に目の前が真っ暗になる。
「惚れた女・・」
じゃ、夕べのは私じゃなくてその人に・・
初めてだったのに・・
怖かったのに・・
あんな恥ずかしい事されたのに・・
貴方が好きになり掛けてたのに・・
私にじゃなかった?
「どうした?
急に静かになって?
まだどこか痛むのか?」
私は彼をじっと見る。
(好きじゃなくても出来る・・
あの時彼はそう言ってから私にキスを・・)
彼の言葉に始めた回想なのに
思い出すと顔が赤くなる。
あの感覚が甦り、体が疼いた。
「まだ熱があるのか?」
彼の手が私の額に触れる。
「まだ無理か・・
お前、今日はここに残れ。
俺は戻って・・」
「嫌・・」
「なんだ?」
「嫌なの・・
一人にしないで・・」
涙が溢れた。
彼は私を見る。
暫くすると私を抱き締めた。
「何時の時代も女ってやつは面倒だ・・」
「嫌に・・なった?」
「いや、可愛い」
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