ディスコミュニケーションの箱庭・第８話

第15章 男はみんなこうするもの

両胸を揉まれ、唇を熱っぽく吸われて思わず身悶える。
高梨くんにこんなことされてる。って、実感するだけで。
…もう駄目。身体中のあちこちがじんじんするほど、感じちゃう…。
唇が離れた瞬間、ねだるような要求が口から溢れた。
「先も。…触って。こう、やって」
彼の指を取って摘ませる。促されるまま、弄り始める彼に更に求める。
「口で。しても、いいんだよ。舐めたり…、吸ったり、しても」
彼の頭が怖々と下がってきた。その唇の感触を先に感じ、抑えきれないはしたない声が喉から漏れる。
「…あぁ…」
わたしの反応に力を得たのか、熱を込めて指先と唇で愛撫を始めた。…わたしはあまりのよさに身を捩る。
これだけで。すごい、感じちゃう。好きな人に触れられる破壊力半端ない。
こんなんでわたし、最後まで堪えられるのかな…。
しっかりしなきゃ。受け身で溺れているばっかりじゃわたしたちは先に進めないんだから。自分を叱咤して気を取り直し、彼が我を忘れたようになっている隙を見てその服に手をかける。念のためそっとお伺いを立てた。
「高梨くん、も。…脱いで、もらっていい？」
「…ん」
わたしの胸に夢中で気を取られている彼の邪魔にならないよう、ボタンをゆっくり外して服をはだけて脱がせた。綺麗な、滑らかな胸と肩。我慢できず首筋に唇を当てる。彼がびくん、と身を震わせた。
「あ…っ、」
「たかなしくん。…もっと」
わたしはこみ上げてくる何かに押し流されないよう彼の頭をぎゅっと抱え込んだ。囁きかける声がどうしようもなく掠れる。
「もっと、わたしの身体。…みて。あの、大したことないけど」
つい付け加えてしまう悲しい性。まあその、事実だし。わたしがつい最近観察させて頂いた様々な女体に較べると、どうにも大人っぽさとか色気とか…。
彼は滅相もない、とばかりにぶんぶんと首を振った。言葉は縺れてすぐには出てこないみたいだけど。
「そんな、…こと。ぜったい。…だって、すごく」
顔をあげてわたしの目をもどかしげに覗き込み、上半身裸の身体を力一杯抱きしめた。
「きれいだ。…こんなに、綺麗なもの」
そっと柔らかく、何かを恐れるみたいに唇にキスする。
「…はじめて見た…」
そんなことはないだろ…。
なんて、ここで混ぜっ返したくはない。お世辞でも大袈裟でもいいや。好きな男の子の口から聞く甘い言葉に溺れていたい。
そうやって励まされでもしてないと。