第15章 男はみんなこうするもの

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やられる、という恐怖以外何も頭に浮かばず何とかその身体から逃れようとするが、全体重を容赦なくかけられて身動きできない。彼は唇を割って入り込んできて思う存分わたしの口を貪った。涙が滲む。 キスは絶対されたくなかった。高梨くんとの大事な場所なのに。ここまであんなに無害そうに見せかけておいてまさかこんなこと。本当に酷い。 それともやっぱり、この人を信じたわたしがいけなかっただけなのか…。 彼はそれでも、わたしの身体に手をかけようとはしなかった。唇を貪り吸いながら全身を押しつけ、甘く呻きながら身をすり寄せて自分の前に回した両手を忙しなく動かす。わたしの脚の間に擦りつけるように腰を遣いながら短く声をあげてやがてぶるっ、と小さく痙攣してぐったりともたれかかった。 「…あぁ…、ひまわり。ん…、すごい、よかった。本当に可愛いよ…」 終わった、と思しき気怠い力の抜けた腕で抱きしめられもう一度キスされた。思わず顔が歪む。 しばらく髪を撫でたり頬を押しつけられたりの愛撫に耐えた。やっと腕を解かれ、身体を起こされて安堵で身体が弛む。 「ごめん、理性飛んだ。こんなの初めてだ。…本当に申し訳ない。謝っても許してもらえないだろうな」 わたしの身繕いを手伝いながら何度も謝る榊さんにどんな反応を見せるのも物憂く、俯いて自分の服を整えた。こんなことのあった後でも途切れないリビングから響いてくる卑猥な叫びに心底うんざりしながら、この人とはもう二度と二人で会ったりするまい、と密かに固く心に誓っていた。 「…え、榊さん?どんな人なのかって?あんたも会ったじゃん。まさにあの通りの人だけど?」 次の日の休み時間、恐怖とパニックは何とか収まったものの憤懣やる方ないまま学校に行ったわたしは鬼崎を捕まえてこっそり問い詰めた。しかし反応は今ひとつ、捗々しくない。 「鬼崎も相談とかしたんだよね。そん中で何か不審なとことかなかったの。急に態度変わるとか。何か…、要求、してくるとか。変な評判とかは全然聞いたことない?」 それを知ってどうするのか。もうどうせ会うことなんかない。あの後もLINEで丁寧なきちんとしたフォローが入ってたけど、無難な返しで誤魔化してあとは放置してある。関わらなければこれで終わりの筈だ。 でも、友達が本当にあいつを安全な人だと信じてたかどうかは少し確かめたくなった。
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