第15章 男はみんなこうするもの

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でも。性欲がないみたいとか、女の子に興味がないんじゃないかとか噂されるような人が何故そんなこと…? 考えても堂々巡りで答えには辿り着きそうもない。わたしはため息をつき、正解だった取るべき行動を模索するのは諦めて気持ちを切り替えた。 そして彼とは二度と絶対に関わることはしない、と改めて自分に言い聞かせて起こった出来事についての全てを丸ごと心の奥の物置に放り込んだ。 そうやって過ぎたことに無理やり蓋をしてしまうと、あとは厳然たる目の前の課題だけが険しく聳え立っていた。つまり、高梨くんとわたしの問題。 さすがにあれだけ懇切丁寧な指導を受けた結果、多分わたしは未経験の女の子としては例外的なレベルでそっちの知識は身につけたと思う。ただそれを実践、しかも大好きな男の子を相手に披露すると考えると腹の底から怯む思いがする。 高梨くんの前であれをやるのか。しかも彼はそんなこと嫌がって拒否反応を示すかもしれない。決死の覚悟で彼の前に身体を投げ出した挙句に顔を背けて拒絶されたりしたら。 想像するだけで涙が滲みそう。そんなことになったらわたし、立ち直れないかも。 そう考えるとどうにも自分からは行動を起こす勇気が出ない。結局このまま何も出来ずに時間が経っていくのかなぁ、と弱気になっていたが、実際はそうも言っていられなかった。 あの男に酷いことをされた記憶も醒めやらないほんの数日後。わたしは眠りに就く前、彼の部屋でシャワーを浴びてさっぱりし髪をタオルで拭きながら浴室から出た。 少し迷う気持ちがないでもなかったが、あれ以来もわたしはほぼ毎日彼の部屋、ベッドの隣に敷いた布団で寝ている。あの男に変なことをされた身体で何となく気が引ける一方で、なにか異変があったと彼に察せられるのも嫌なので生活のパターンを変えることはしたくなかった。 わたしより先に入浴済みだった高梨くんが、待ち受けていたように腰掛けていたベッドから立ち上がり、わたしに近づいてきた。 前に立ち、包むように胸に抱き寄せたあとそっと顔を仰向かせて唇を重ねる。 柔らかく吸いつかれて身体の芯がわななくように感じる。 …ああ。 他の誰とも違う。改めて思い入る。こんな風に、抗えないほど全身が引き寄せられるのはこの人だけ。 どうしても高梨くんが欲しい。彼以外とは絶対に嫌。 そのことを実感して、わたしは素早く肚を決めた。
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