エピローグ とは 世界のはじまり

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 この小説を読んでいる紳士淑女の諸君よ。先ほどの説明と重複するのだが…この小説の主人公である吾輩は、そんなに立派な人間とは言えないのだ。トランクスのゴム紐が緩い男は、精神的にも何だか緩いのですよ。会社は倒産したのに、いつも通勤していた時間に目覚ましをセットしてしまうだとか、45?のごみ袋を出し忘れて部屋に2つあるとか、人見知りなのに営業マンになったとか。  「まーったく。俺は何やってんだろうな。」誰もいない公園を窓越しに見ながら俺は言った。  「結婚生活は5ヵ月で終了。別れた妻とは、10年も付き合ってたのに。」水道水を電気ポットに入れ、スイッチを入れながら俺はボソボソと独り言を言う。「悪い癖だよな。独り言。」倒産した会社の上司からも、元妻からも、小学校3年生の担任の先生からも言われた俺の癖だ。ずーっと直ってない。  「歪んでますよ。どーせ俺は。」インスタントコーヒーをマグカップに直接入れながら俺はつぶやく。沸騰した水道水をマグカップに注いだ。マグカップには、インスタントコーヒー特有の出来合の香りがする。俺は唇を火傷しないようにゆっくりとそれを飲んだ。  時計は午前5時47分。  大量に炊いて、1人分に小分けし冷凍庫に放り込んだご飯も昨日食べたから、冷凍庫には何もない。冷蔵庫に入っているのは、マヨネーズ、ケチャップ、からし、お酢、醤油、味噌だけだ。コンビニのおむすびも食べ飽きた。誰かが作ってくれるご飯もない。俺は何も入っていない胃にマグカップ一杯分のインスタントコーヒーを流し込んでから髭を剃ることにした。  
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