ハローワーク とは 仕事のはじまり

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ハローワーク とは 仕事のはじまり

 ベージュの綿のズボンと紺のトレーナーに着替えた俺は、電車に揺られてハローワークへ向かう。  髭を剃っても、寝ぐせは櫛でかるく直しただけだ。歯磨きはしたが、鼻毛は切ってない。押し込んで隠しはしたが、何故かモゾっと顔を出す。俺は配慮にかけるのだろうか。電車のガラス越しに見る俺の引っ越したアパートは自信がなさそうに移る。「俺にそっくりだ。」つり革を左手で持ちながらたいして混んでもいない社内でつぶやいてしまった。  どこの誰とも知らない、おばさんはチラリと俺に目をやる。そして、興味もないという視線を送り、また窓の外を見つめた。  独り言を聞かれて場違いのような気持ちになった俺は、腕時計に目をやる。  午前9時5分。SEIKOOUと記載された腕時計は中学校から高校までの同級生(男)A君が誕生日にプレゼントしてくれたものだ。時間を気にするのに、時間にルーズな俺への心配と不満のプレゼントに数少ない(3人)の友人達は申し合わせたように時刻を表示するものを俺に贈る。  隣の駅までは、6分程で着く。俺は見慣れた景色を興味もなく眺めた。     
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