ハローワーク とは 仕事のはじまり

2/4
前へ
/10ページ
次へ
 外には、俺のアパートと似たような建物があり、電車が進むに連れて、次第に大きなマンションとなり、最後には偏差値もそう高くない大学の付属高校へと変化した。  「人見知りの元建築営業マンが、大学の高校の仕事を会社へ供給できるわけもないか。」俺はまたつぶやいた。  以前に勤めていた会社は田舎の小さな建築会社だった。父親のコネで就職したその会社は、大手の建築会社と新設される運動部の部室を建築するという仕事を落札することができず、そう大きくもない赤字を抱えて倒産するに至った。  午前9時14分。俺は電車から降りて改札を通過する。200円の切符は吸い込まれるようにして消えた。改札を抜けると、寂れつつある現実を逃れようと、開発をはじめた商店街がある。  俺は空き地ばかりになった商店街を歩き、歩道橋の階段を上り、道向かいにあるハローワークの自動ドアをくぐった。  ハローワークの玄関口には「営業時間は午前9時~午後5時です。すべての業務は午後5時に終了致します。」と書かれた看板が置いてある。  「仕事を紹介することろが、まるで働きたくないってか。」ハローワークのエントランスで、俺はボソリとつぶやいた。  張り出された求人表を眉間にしわを作って見上げるた誰かは、振り返り俺をチラリと見て、目線を元にもどした。まるで俺にそっくりだ。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加